大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(う)257号 判決

一 所論は、要するに、原判示第一の事実につき、被告人が「右手を着用のコート右外ポケツト内に入れて被害者のやや右後方に接近しコートの中でその右手を前にさし出して、五本の右手指全部を被害者のズボン右ポケツトに差し込むことは物理的に不可能ではないばかりか、むしろ容易であつて、右側が投票券売場という周囲の状況からすれば、コートを幕としたかかる手口も決して不自然ではないと認めることができる」と判示した原判決には理由のくいちがい、理由不備がある、というのである。

しかしながら、刑訴法三七八条四号前段にいう「判決に理由を附せず」とは、判決自体において同法四四条一項、三三五条一項により要求されている理由を全く欠如しているか、その一部を欠如していることが原判決の判文自体から明らかな場合をいい、同法三七八条四号後段にいう「理由にくいちがいがあること」とは、主文と理由との間又は理由の内部においてくいちがいのあることが判文自体から明らかな場合をいうのであつて、訴訟記録に現われた証拠と認定された事実とのくいちがいは事実誤認の問題と解すべきものである。そして、所論の実質は、右の意味において、すべて事実誤認の主張に帰するので、後に事実誤認の主張に対する判断の項において、詳細な検討をすることとする。

……………(中略)……………

二1 外国人登録制度を規定した外国人登録法が憲法一四条に違反しない旨判示した最高裁判決(昭和三四年七月二四日最高裁第二小法廷判決)は、外国人登録法全体を検討した上で示された判断であることが明らかであるから、同判決の趣旨に徴すれば、同制度の実効性確保の重要な手段たる外国人登録証明書の常時携帯義務を罰則をもつて命じた外国人登録法一三条一項、一八条一項七号が憲法に違反するものでないことが明白であつて、これと同旨の説示をした原判決には、何ら憲法及び外国人登録法の解釈適用の誤りは存しない。

2 刑罰法令に刑を定めるに当たり、罪の種類、態様、程度に従つて、いかなる種類、範囲の刑を科すべきものとするかは立法機関に委ねられた立法政策の問題で、憲法適否の問題ではないことは、判例(最高裁昭和二三年一二日一五日大法廷判決、刑集二巻一三号一七八三頁、同昭和三四年七月二四日第二小法廷判決、一三巻八号一二一二頁)となつているところであり(最高裁昭和四八年四月四日大法廷判決は、刑法二〇〇条は尊属殺の法定刑を死刑又は無期懲役刑のみに限つている点において、その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、普通殺に関する同法一九九条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱をするものと認められ、憲法一四条一項に違反して無効である旨判示したが、立法機関が刑制定の裁量範囲を逸脱して著しく不合理な差別をしたと認められる特殊な場合に関するものであつて、刑罰法令の刑を定めるにあたり、罪の内容に応じた刑の種類、範囲の決定が立法政策の問題である旨判示した前記各判例を変更したものとは認められない。)、昭和五六年法律第八五号による改正前の出入国管理令二三条一項の旅券等常時携帯義務違反の行為が同令七六条によつて罰金一万円以下とされていたが、右は一時的に本邦に在留する外国人に対する義務違反に関するもので、外国人登録証明書の常時携帯義務とは罪の内容を異にするものであるから、同証明書の常時携帯義務違反行為が外国人登録法一八条一項七号により一年以下の懲役若しくは禁錮又は三万円以下の罰金とされているからといつて、立法目的達成の手段たる刑につき著しく不合理な差別的取扱をしているとはいえないのであつて、同法条の刑は立法機関の刑制定の裁量範囲内に属した立法政策当否の問題といわなければならない。

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